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米以外の穀類の中で大量に入手可能な大麦, コーングリッツ及びコーンスターチ等を用いて消化性及び小仕込試験を行い次の結果を得た。1) 白米 (75%精白) に比べ, 大麦, 裸麦及びコーングリッツ等の穀類中の粗蛋白質, Fe, K, Mg, P及びその他の無機塩がいずれも多かった。一方, 粒状のα化コーンスターチでは, Fe, Na及びCaが多くMgがほぼ同量であったが, 粗蛋白質及びその他の無機塩はいずれも少なかった。2) 通常のこしきにより蒸きょうした試料と瞬間連続膨化装置によりパフ化した試料の消化性を比較した結果, パフ化した試料が消化性にすぐれ, 特にコーングリッツやコーンスターチ等の粉体試料で大きな差が認められた。3) 小仕込試験によるアルコールの生成経過は, 白米に比べ大麦, パフ化なーングリッッで著しく早く, 粉状パフ化コーンスターチではやや遅いか同じ程度であった。4) 製成酒は, 白米に比べ, いずれも滴定酸度がやや低く, アミノ酸度が白米の25～50%と著しく低く, Feが多く着色度が大きいという特徴がみられた.5) 酒質は, 白米に比べいずれも, 味が淡麗で軽く, やや押し味に欠け, エステル香が低く, 大麦では更に特有の香りが認められた。

前培養時のマグネシウム量が, 酵母の増殖, 及びアミノ酸取り込み能に及ぼす影響を調べ, 次の結果を得た。1) 酵母の増殖に関しでに5ppmあれば十分だが, アミノ酸取り込み能は1,000ppmまでマグネシウム濃度の上昇とともに高まった。2) 培地のマグネシウム濃度を変えると, 培養後の菌体の金属含量が大きく変わるが, アミノ酸取り込み能との直接的関係は見出されなかった。3) 酵母をマグネシウム濃度の低い培地で培養し, 時期を変えてマグネシウムを添加して培養を続け, 培養後の酵母のアミノ酸取り込み能を測定したととろ, マグネシウム添加が酵母の増殖期以前であれば効果があるが, それ以降に添加しても効果が認められなかった。4) マグネシウム濃度を5ppm及び1,000ppmとして前培養し, 本培養培地に移したところ, 本培養培地のマグネシウム濃度が低いとき (5ppm) には, 酵母の増殖の盛んな時期に前培養の影響がみられた。5) 今回調べた4種類のアミノ酸に関しては, 高濃度のマグネシウムで前培養することによって, いずれも取り込み量が増した。

パフ玄米仕込時に, 醪初期から溶解が促進される現象がみられたので, その原因について無機塩の点から検討した。1) 留後4日目の無機塩含量を比較したところ, パフ玄米仕込みが75%精白米仕込みに比べK, P及びMg含量が10-13倍多く, Zn, Ca, Mnには大差はなかった。2) K, P及びMgを各々500ppmずつ添加して麹による溶解試験を行ったところ, 無添加に比べ約7倍の溶解率がみられた。3) K, P及びMgの中ではMg添加で最も溶解率が高くなった。その最適濃度はK及びPが500ppmまたはそれ以上, Mgが300～500ppmであった。4) 液中のα-Amylase, Glucoamylase及びAcidprotease力価はいずれも無機塩添加区で高く, 中ではMg添加区で3酵素とも極めて高い力価を示した。本報告の内容は昭和60年度日本醗酵工学会大会 (大阪) にて発表した。

気流式瞬間連続膨化装置により膨化 (パフ化) した85%精白米の醸造適性について, 75%精白米 (未処理) を対照として比較した。1.消化性もよく, 膠におけむ異臭生成の少ないパフ化の条件は, 3.0kg/cm2,200℃, 7sec.であった。2.パフ白米を膠掛米として, 総米100kgの試験醸造を3年間実施したところ, 製造歩合は対照とほとんど差はなかった。3.製成酒の主な成分では, アミノ酸度;0.46-0.80 (対照;1.60-2.07) 着色度;0.026-0.029 (対照;0.025-0.028), Fe含量;0.08-0.13ppm (対照;0.05-0.10ppm) で, アミノ酸度が極端に少なく, 着色度はほぼ同じであった。4.製成酒の酒質は, 淡麗で味が軽い特徴がみられたが, 弱い異臭が指摘された。5.異臭は, 活性炭素繊維FW-500処理でかすかに感じる程度まで低減することができた。

58年度タイ国で採取した酵母706株の中から, 38～40℃で増殖及びエタノール発酵能のすぐれた高温発酵性酵母を選択し, それを用いてタイ国の蒸留酒LHAORONGタイプの米焼酎の製造を行った。1・目的の酵母を1株 (1031R) 選択した。この株と既に57年度採取株から選択されたS. cerevisiae (94-2) の40.5℃における比増殖速度 (μ) 及び平均世代時間 (td) を求めたところ, 1031 R: μ=0.480hr-1, td=1.44hr, 94-2: μ=0.396hr-1, td=1.75hrであった。なお, 対照のK-7ではμ=0.139hr-1, td-4.99hrであった。2.この2株とも, 25～40℃ 間のμ及びtd値には大きな差はなく, これも高温発酵性酵母の特徴の1つと考えられた。3.1031R株をS. cerevisiaeと同定した。4.この酵母と糯米を用いて米焼酎を製造した結果, 味が濃く, 丸く, 甘味を伴った新しいタイプの焼酎が得られた。

胚芽添加仕込みにより, 製成酒のアミノ酸度, 酸度が減少し, 香気成分が増加する。そこで, 胚芽中の有効成分をアミノ酸の減少を指標として調べ, 下記の結果を得た。1. 灰化胚芽にも同様な効果が認められたので, 胚芽中に含まれる無機成分の組合せの添加試験を行い, Mg2+, PO43-, K+の3種が必要であることを明らかにした。2. 多元配置法により, これら3種の主効果が認められ, その寄与率はMg2+80.2%, PO43-10.7%, K+7.5%と計算された。3. これら3種の添加量の最適組合せは, 汲水50ml当りMg2+ 0.3mmole, PO43-0.2～0.4mmole, K+0.4m moleであった。4. この最適組合せの添加試験を総米200gの小仕込みで行った。製成酒のアミノ酸度は, 無添加の対照が1.34に対し, 0.72と約半分となった。5. Mg2+, PO43-, K+は酵母のアミノ酸取込みに対し促進作用を示すが, 反対にCa2+, Mn2+は阻害作用を示した。終りに, 御校閲頂いた醸造試験所所長, 佐藤信博士および第6研究室長吉沢淑博士に感謝いたします。

(1) 酢酸イソアミル生成活性の高い酵母を, 清酒に添加して後発酵に利用することにより, 酢酸イソアミルが生成された。イソアミルアルコールの変化はほとんどなく, 結果としてE/A比も高くなった。(2) 後発酵による酢酸イソアミルの生成にはイソアミルアルコールの存在が必要であり, また酢酸イソアミルが10 ppmまでは, その存在の有無にかかわらず, 同程度の酢酸イソアミルが生成された。(3) 中高沸点成分でも, アルコール類の変化は小さく, エステル類の生成が認められた。(4) 固定化酵母の利用が有効であることが示された。(5) 後発酵により, 品質, 特に香りについて向上することが官能検査で示された。なお, 本報文の内容の一部については昭和61年度日本醗酵工学会大会において発表した。

高温発酵性酵母1031-R株を用いて, 40℃ で生粉砕とうもろこしの無蒸煮発酵を行い, 最適条件を検討した結果, 選択した最適酵素剤を用いると, 原料に対して0.05%という希薄な酵素濃度で, ほぼ完全に発酵させることができた。特に力価から見ると, 原料1gあたり, α-アミラーゼで6単位, グルクアミラーゼで33単位, 酸性プロテアーゼで1単位と非常に低いものであった。又, 糖化酵素の他にセルラーゼ剤を添加したり, K, Mg, Pを含む無機塩を添加することで, エタノール生成速度は上昇し, 撹拌をも条件に入れると, 静置の時の1.6倍となり, 以上のことから高温発酵性酵母を用いて無蒸煮発酵を行うメリットが見い出された。

「ポンセンベイ」と聞けばなつかしく感じられる方, あるいは第2次世界大戦後の食糧難の飢餓感を思い出される方などいろいろあると思われる。「ポンセンベイ」の原理を清酒の原料処理に利用しようとするユニークな研究が行われ, その結果, 省資源, 省エネルギー及び清酒の多様化に役立つことが立証されたので, 本稿で解説いただいた。

鑑評会におけるウイスキーの官能評価法の設定を試みた。1. 全体の評価項目として香りの調和, 豊かさ, 軽さ及び個性, 味の濃さ, まろやかさ及び調和の7項目をとりあげ, ル様香, 穀物香, エステル香, 甘い香, 樽香, 酸臭, アルコール香, ファッティ, サルファリィ, アルデヒド臭, 未熟臭及び異臭の12項目を, 味としては異味の1項目をとりあげ, 各項目に該当する具体的な香りや味 (例えばフェノール様香にはスモーキイ, 薬品臭) の名前も同時に示し, パネルが相当すると判断した項目にマークするという方法をとった。3. 尺度法で評価した7項目については, ダイアグラムで表示する方法を採用した。

酒質の多様化や製造コストの逓減をはかるため, 承認規準の特例取扱いが認められ, これに伴う試験醸造が本酒造期行われることとなった。すなわち原料白米の一部に施行令第二条に掲名されている穀類, でん粉やこれらのこうじが清酒の原料として使用できることとなった。そこで新たに使用できる原料の品質, 製造工程と製成酒への影響を検討した結果について解説していただいた。

低精白パフ米製成酒からのFe及びその他の金属の除去法を検討した。1.Feの吸着にはUniselex UR-3200 (H) が, その他の金属の吸着にはAmberlite IR-120 (H) がすぐれていた。2.酸の吸着・調整にはDiaion WA-21 (OH) が良好であった。3.清酒の除金属法として, 各樹脂をカラム1 (Amberlite IR-120 (H))-カラム2 (Diaion WA-21 (OH))-カラム3 (Uniselex UR-3200 (H)) の順に接続し, カラム1及び2を単一接触法, カラム3を循環法で処理する方法が最も効率的であった。4.パフ玄米製成酒 (Fe: 1.8PPm, K: 946PPm, Mg: 360ppm, OD43010: 0.258, 酸度: 3.6) を, 樹脂量に対しカラム1: 30倍, カラム2: 22倍, カラム3: 100倍量の割合で処理した結果, 処理酒の各成分 (Fe: 不検出, K: 160PPm, Mg: 不検出, OD43010: 0.013, 酸度: 1.0) は品質上問題とならない濃度まで減少した。

総米100kgの仕込みを3本 (対照醪, 胚芽添加醪, Mg2+, K+, PO43-の無機イオン添加醪) 行い, 醪炉液中および製成酒の香気成分の変化について調べた。これらと関連が深いと考えられるalcohol acetyltransferase活性と酵母のATP量についても併せて検討した。酵母によるアミノ酸代謝と関連の深い高級アルコールの生成については, 胚芽添加酵でi-AmOHの生成が多かったが, 無機イオン添加は対照と大きな差はなかった。TyrOH, TrpOHもi-AmOHとほぼ同様iのパターンを示したが, フェネチルアルコールの酵中の生成パターンはこれらと異なり,“落泡時” と “地” に2つのピークを持つ特徴的なパターンを示した。i-AmOAcは胚芽添加が多く, 次いで無機イオン添加, 対照の順であった。また, E/A比では, 胚芽添加, 無機イオン添加が対照酒に比ベ, 製成酒でそれぞれ1.3, 1.2倍となった。i-AmOAcの生成に関与していると言われているalcohol acetyhransferase活性の変化は, 留仕込後に減少し醪末期に再上昇したが, i-AmOAc量の生成パターンと見かけ上相関はなかった。

清酒の貯蔵着色に対する金属イオンの影響を調べた。清酒をDowex A-1で処理するとMn2+, Cu2+およびZn2+が効果的に除去され, 清酒の貯蔵着色が抑制された。Dowex A-1の塩酸溶出物 (M区分) のDowex A-1処理酒 (S-M区分) に対する効果はM区分を灰化しても変らないことから, M区分の効果は金属イオンによるものと考えられる。Mn2+, Cu2+, Fe3+およびZn2+の組合せのS-M区分の貯蔵着色に対する効果を調べた結果, S-M区分の貯蔵着色に対してMn2+, Cu2+およびFe3+が促進的に働いていることが明らかとなった。さらに, 各種樹脂と活性炭 (造粒) について金属の吸着能と清酒の着色防止に対する効果を比較した結果, 検討した試料中Dowex A-1が最もすぐれた効果を示した。

台湾米で醸出した清酒の揮発性カルボニル化合物をアルミナカラム, シリカゲルTLCを用いて分離, 同定し定量した。1. 揮発性カルボニル化合物は2, 4-DNPとして14 mg%含まれていた。2. 揮発性成分として, 少なくとも9種のカルボニル化合物の存在が考えられ, アセトアルデヒド, イソバレルアルデヒドを確認し, n-カプロンアルデヒド, アセトン, フルフラールの存在を推定した。3. 定量の結果, 2, 4-DNPとしてアセトアルデヒドが88%, イソバレルアルデヒドは2.2%, アセトンが0.7%程度であった。カルボニル化合物そのものに換算した場合, アセトアルデヒド1.36mg%, イソバレルアルデヒド0.10mg%, アセトン0.02 mg%であった。4. 含量が多く, 香気にも影響していると思われる一物質は同定, 推定できなかった。