Kimiko Hirano, Hajime Mori, Youko Miwa, Takao Yasue, Motoyuki Ishiguro, Kazutoshi Watanabe, Nobuyuki Takada, Sachiro Watanabe, Hiroshige Ohhashi, Toshiharu Ikutaka, Takahiro Hirano, and Yasuhiro Hirano
原発性マクログロブリン血症では, 分子量約100万のIgMが異常に増加し, そのIgMの血管内分布が80%にのぼり, 血清蛋白濃度の上昇と血清粘度の増大により過粘度症候群 (Hyperviscosity syndrome) をきたす結果, 多臓器障害を呈する疾患である. 今回, 我々は心不全と貧血を主症状とし, 化学療法が実施できなかった本症例に2週間に1回の3.5年 (95回) にわたる維持二重濾過血漿交換を応用し, 良好な結果を得たので, その臨床経過を報告した.対象は56歳の男性で, 昭和57年9月より昭和61年3月の間, 維持二重濾過血漿交換を平均2週間に1度の頻度で計95回施行した. アルブミン補充二重濾過血漿交換法により, 前に9,000mg/dl以上あったIgMを4,000-5,500mg/dlにコントロールすることにより, 半年後の赤血球は220万/mm3から330万/mm3と, 血小板は51,000/mm3から100,000/mm3と, Hbは6g/dlより10g/dlへと改善し, CTRは68%から65%と改善し, 肺野のうっ血像も軽減した. 昭和59年8月以降は逆洗法によりアルブミンの補充なしに良好な結果を得た. 貧血は軽度増悪したが, 心不全のコントロールは良好で心電図上の虚血性変化も改善した.多臓器障害を呈する原発性マクログロブリン血症に, 3.5年にわたり計95回の維持二重濾過血漿交換を適応し, 安全かつ有益な結果を得た.