目的: 咬合器の作業側側方顆路角の変化が犬歯相当部補綴物の側方ガイドに与える影響を, 実際の咬合器の運動を測定して明らかにすることを目的とする.方法: 作業側側方顆路角調節機構を備えた半調節性咬合器に模型を装着し, 作業側下顎犬歯部尖頭の運動経路を6自由度顎運動解析装置ナソヘキサグラフ®を用いて測定した. 作業側側方顆路角のほかに平衡側側方顆路角, 矢状顆路傾斜度をそれぞれ変化させて側方運動を行い, 運動経路の矢状面投影角, 水平面投影角, 前頭面投影角について比較検討した.結果: 矢状面投影角は, 作業側側方顆路角がマイナス方向へ向かうに従って, 平衡側側方顆路角および矢状顆路傾斜度が増加するにつれて大きくなった. 水平面投影角は作業側側方顆路角がマイナス方向に向かうに従って, また平衡側側方顆路角が増加するにつれて小さくなったが, 矢状顆路傾斜度による影響は認められなかった. 前頭面投影角は作業側側方顆路角がマイナス方向へ向かうに従って, また平衡側側方顆路角, 矢状顆路傾斜度が増加するにつれて大きくなったが, 作業側側方顆路角がプラス方向に向かったときには一定の傾向を示さなかった.結論: 作業側側方顆路角がマイナス方向に向かい平衡側側方顆路角と矢状顆路傾斜度が増加するに従って, 作業側側方顆路角の影響が大きくなることが明らかとなり, 補綴物製作にあたり作業側側方顆路角の調節が重要であることが示された.