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本研究では看護過程における看護者の評価の実態を明らかにするための分析方法を,アブダクションを用いて開発した.方法は,を確認し,これを根拠にを暫定的に立てた.次いでを克め,作業手順に基づき実際に分析を行った.作業手順に基づき得られた分析結果および,分析の過程を考察した.以下に,開発した看護過程における評価の質的分析方法を示す.1.看護記録を手がかりにして,看護過程を再構成する・必要に応じて,日々の看護記録以外に,看護過程展開の全体を追うため看護計画など諸記録と,健康状態の推移をとらえるため診断治療過程を医師の記録で充足する2.再構成された看護過程から,【対象の健康状態の推移】を対象化する・看護理論に基づき,予め対象の健康状態をアセスメントし,分析の焦点を定める3.再構成された看護過程から,【判断過程】を対象化する・看護の評価に関する記述に関し,予めアセスメントで明らかとなった対象の健康状態に照らして,判断過程の欠如を特定する・評価の全体性を補うため,再構成された看護過程に関与した看護師および医師ら,医療従事者に聞きとり調査を行う4.【対象の健康状態の推移】と【判断過程】の相関関係を明らかにする・【対象の健康状態の推移】と【判断過程】を併記した表を作成する5.【判断過程】の事実をもとに看護者の認識に描かれた表象を明らかにする・【判断過程】の事実を【反映像】【問いかけ像】【合成像】で類別する・当事者への確認および,看護実践のエキスパートと看護理論家のスーパーバイズを受ける, We developed the method of qualitative analysis for nursing assessment and critical thinking in nursing process using abduction. 1.Collecting data from daily nursing records and describing nursing process. 2.Identifying change of patient's health status applying nursing theory in advance. 3.Identifying nursing assessment and critical thinking. *Searching insufficient data. *Re-collecting data of nursing process sufficientry by interviews. 4.Clarifying relationship between change of patient's health status with nursing assessment and critical thinking. *Composing a synopsis that show change of patient's health status and nursing assessment and critical thinking 5.Clarifying representation images of a nursing assessment and critical thinking. *In this study, representation images are pictured in recognition as [HANEI-ZOU][TOIKAKE-ZOU][GOUSEI-ZOU]. *Data and analysis data are ezamined and considered by nurses themselves, experts of terminal care and specialists of nursing theory.

本研究の目的は,産褥期の[母親役割の自信尺度]と[母親であることの満足感尺度]を開発し,その妥当性・信頼性を検討することである.先行研究から導き出された概念枠組みに基づき,項目案を作成した.母性看護学専門家により内容妥当性を検討し,パイロットスタディーにより表面妥当性を検討した.第一次調査は,褥婦100名を対象に質問紙調査を行い,尺度項目を選定した.第二次調査は,褥婦115名を対象に質問紙調査を行い,[母親役割の自信尺度](20項目)と[母親であることの満足感尺度](9項目)の妥当性・信頼性を検討した.[母親役割の自信尺度]は,正規分布であり,退院時から産褥1か月時に得点が有意に上昇した.また,経産婦は初産婦よりも有意に得点が高く,尺度の内容妥当性を支持している.尺度全体のα信頼性係数は0.88～0.89で十分な内的整合性が確認された.[母親であることの満足感尺度]は,高得点に分布し,退院時と産褥1か月時の再テスト法ではrs=0.71(p, This study aimed to examine reliability and validity of the Postpartu

大学病院における慢性疾患専門外来での患者の自己管理を支援するための患者指導の実態を明らかにすることを目的に質問紙調査を行った.調査対象は,その部署で慢性疾患の患者指導の中心的な役割を担っている看護師とした.調査は,全国の大学病院135施設に依頼し,46施設,110名の回答を得,99名の回答を有効回答とした.患者指導に携わっている看護師のうち,認定看護師や糖尿病療養指導士など特定の指導に関わる資格を取得している者は,99名中19名であった.個別指導を行っていると回答した看護師は,99名中91名であり,指導を行っている疾患は,糖尿病,高血圧,高脂血症,虚血性心疾患など生活習慣が疾病の発症,進行に関わっているものやパーキンソン病,ALS,膠原病のような難病に含まれる疾患など多岐にわたっていた.看護師は,など経済的基盤の問題,人的・物的環境の問題,個別指導体制の問題,看護師の指導力の問題など専門外来で個別指導を行う上での問題を様々抱えている中で,慢性疾患をもちながら生活しているしながらなど自己管理を支援するかかわりなどを心がけ実践している実態が明らかとなった., The purpose of this study is to identify current situations of individualized instruction for out-patients with chronic illness on university hospitals. Study subjects were nurses that play a key role of instruction for out-patients with chronic illness on each clinic. Post cards of application were mailed to 135 university hospitals. Questionnaires were mailed to nurses that got an introduction to nurse directors. 110 responses of 46 facilties were returned by mail. 99 of them were valid responses. 19 of 99 nurses had special licenses for instruction (Certifi

本研究の目的は,男女差に焦点を当て,高校生の現在の食習慣の特徴を明らかにすること,小学生時代からの食習慣の変化を明らかにすること,および食習慣と体型との関係を検討することである.3校の高等学校に在籍する1～3年生576名に対し,26項目から成る食習慣の質問紙調査を行った.因子分析を行い,食習慣の構造を把握した後,食習慣の男女差を項目毎および因子毎に比較した.また,小学生時代・中学生時代の食習慣を振り返り,現在の食習慣と比較することで,食習慣の変化を分析した.その結果,食習慣の因子として,「第1因子:高脂肪・糖分・塩分・だらだら食い」「第2因子:不規則な食事」「第3因子:孤食・外食・コンビニ弁当」「第4因子:過食・早食い」「第5因子:好き嫌い」が得られた.また,男子の方が女子より第3因子が有意に高く,女子は男子より第5因子と「食べ過ぎをする」「ダイエットをする」の2項目が有意に高かった.男女共に,第2因子と第3因子は,学年が進むにつれて増加し,第5因子は学年が進むにつれて減少していた.男子では,第1因子と第4因子は,小学生時代からの変化が少なかった.女子では,第1因子は,中学生時代からの変化が少なかったが,第4因子は,学年が進むにつれて増加していた.男子ではBody Mass Indexと第4因子は有意な正の相関がみられたが,女子ではみられなかった.以上より,小学生から高校生までの年齢と男女差を加味した食教育への示唆が導かれた., This study explored the changes in the structure of eating habits of high-school students associated with leaving elementary school and how this was related to gender. The correlation between eating habits and body mass index was also examined. A total of 576 high school students from 3 schools completed a questionnaire on eating hab

婦人科領域の病変に対する保存的療法として,アルゴンダイレーザー,YAGレーザー,CO_2レーザー療法を行い,細胞診,コルポスコープ診,組織診にて追跡管理した。上皮内癌15例に対してアルゴンダイレーザー療法を行い,7-10日後の摘出子宮の検索では9例60%に上皮内癌の遺残は認められなかった。YAGレーザー,CO_2レーザーは子宮頸部上皮内新生物,コンジローマ症例に対して行い,8週後,1年後の病変の遺残の有無を検索し,一次治癒,1年治癒とした。YAGレーザー,CO_2レーザーの一次治癒はそれぞれ96%,89%,一年治癒はそれぞれ89%,92%と良好な成績であった。YAGレーザー,CO_2レーザー療法後は,外来で細胞診,コルポスコープ診にて追跡管理され,それぞれの変化についても併せて検索が行われた。レーザー療法の副作用は,いずれも軽度で治療効果を上回る副作用は認められなかった。各種レーザー療法の比較検討では,機器の大きさ,治療時の操作,時間,副作用の程度等で差が認められ,それぞれ長所,短所が認められたが,治療成績はいずれも良好であった。以上よりわれわれは子宮頸部上皮内新生物,コンジローマなどの婦人科領域の病変に対する保存的療法としてレーザー療法は有用で,今後臨床応用が可能なものと考えた。, We treated 15 patients with carcinoma in situ (CIS) of the uterine cervix by argon dye laser, 28 patients with cervical intraepithelial neoplasia (CIN) or condyloma by YAG laser, and 73 patients with CIN or condyloma by CO_2 laser. Thereafter, they were followed up cytologically, colposcopically and histologically. In addition, these 15 patients underwent hysterectomy 7-10 days after argon dye laser therapy, which resulted in demonstrating no residual carcinoma in 9 cases (60%). The 101 patients with CIN or condyloma were examined 2 and 12 months after YAG or

生体内のthromboxane A_2(TXA_2)とprostacyclin (prostaglandin I_2: PGI_2)産生の新しい指標として最近注目されている,ヒト尿中の11-dehydro-thromboxane B_2(11-dehydro-TXB_2)および2,3-dinor-6-keto-prostaglandin F_1 α (2,3-dinor-6-keto-PGF_1 α)のradioimmunoassay(RIA)による測定系を確立し,さらに臨床応用への有用性を検討した。尿中の11-dehydro-TXB_2はoctadecylsilyl (ODS)シリカミニカラムによる抽出・シリカミニカラムによる精製の後,11-dehydro-TXB_2に対する抗体を用いてRIAにて測定した。尿中2,3-dinor-6-keto-PGF_1αはODSシリカミニカラムによる抽出の後,薄層クロマトグラフィーにより6-keto-PGF_1 αと分離した後に,6-keto-PGF_1 αに対する抗体との交叉反応性を利用してRIAにて測定した。これらの測定系は感度・信頼性・再現性のいずれも優れていた。次にこの測定系を利用して以下の臨床試験を行った。(1)健常男性6人に対してアスピリン100mgないし500mgを7日間投与したところ,11-dehydro-TXB_2は100mg・500mg投与とも同程度に有意に抑制されたが,2,3-dinor-6-keto-PGF_1 αは500mgでより強く抑制された。またアスピリンによる抑制効果には個人差も大きく認められた。(2)健常男性5人に対してTXA_2合成阻害薬OKY-046を投与したところ,11-dehydro-TXB_2の抑制に伴い2,3-dinor-6-keto-PGF_1 αの増加が見られた。(3)高コレステロール血症患者では尿中の11-dehydro-TXB_2が正常者に比べ増加していたが2,3-dinor-6-keto-PGF_1 αは差がなかった。以上の結果より,今回確立したヒト尿中の11-dehydro-TXB_2と2,3-dinor-6-keto-PGF_1 αのRIAによる測定系は簡便で信頼性が高く,臨床応用にも有用な優れた方法であると考えられた。, A new assay method using radioimmunoassay (RIA) was developed for the determination of urinary amount of 11-dehydro-thromboxane B_2 (11-dehydro TXB_2), one

多発性骨髄腫(MM)54例の臨床像の特徴および治療法の問題点を検討した。年齢は平均63歳,病型分布ではIgGが67%,IgAが24%と大多数を占め,IgD, Bence-Jones, Nonsecretory型が少数認められた。Stage I, IIでGが,Stage IIIではG以外の型が多かったことは,G以外のMMはよりその進行度が早いと考えられた。初診時自覚症をみると,全症例で50%が,Stage IIIで22%が,Stage IIで56%が無自覚だった。有自覚症例で症状発現から診断までは約1.5年と長期間を要した。入院時検査所見で血算値等に異常の見られたのは少数で,Stage IIIでさえも約3分の1程度で,このことは自覚症が出難い事実とともに,その診断を困難にしている要因と考えられた。治療奏功度につき二つの群[(Single or Double) or (Combination)]の治療法で検討したところ,両者に差はなかった。生存率につき検討したところ,全体症例の50%生存率は4.9年であり,年齢,骨髄中の形質細胞数による差はなかった。GはAに比し,Stage IはII,IIIに比しその延長が認められたが,治療奏功度,治療法で生存率に差はなかった。以上より,MMは多くの症例が無症状で,検査所見が陰性であることからその診断が遅れ,良好なquality of lifeを望めなくなった時期に始めて診断,治療が行われている事が分かった。治療法では,特に進行例では従来行われていたmelphalan, prednisolone療法と多剤併用療法の間に奏功度,生存率の両面にわたって差がないのが判明した。従来の考えでは病期の進行していない病態では,無治療で観察し骨痛,病的骨折,貧血などの臨床症状が具現化してから治療するとしているが,それでは遅すぎ,インターフェロンなどのtumor genesisの恐れのない薬剤を早期に使用すべきと考えられた。, ステージの進んだ症例に対しては,インターフェロンを従来の化学療法に加えるなど新たな対応策が必要と考えられた。今後老人健診などを通じより早期に診断し,quality of lifeを妨げる病変が出現する以前に治療を行うべきと考えられた。

肥満の合併症発症における内臓脂肪蓄積の臨床的意義を明らかにし,さらにその成因を,臨床的および生化学的,細胞生物学的方法を用い明らかにすることを目的とし検討した。内臓脂肪蓄積の指標として,肥満者の腹部CTスキャン臍部断面像における内臓脂肪(V)と皮下脂肪(S)の面積比(V/S)を用いると,V/Sは男性では女性に比べて高く,若年者に比べて中高年者で高値を示した。40歳以上の女性において高血圧,糖尿病,高脂血症,高尿酸血症の合併頻度を比べるといずれもV/S高値群で低値群に比し高かった。V/Sと空腹時インスリン値は正の相関を示し,インスリノーマの患者7例はいずれも内臓脂肪優位の脂肪分布を示した。天井培養法によりWistarラットより培養した幼若脂肪細胞の増殖は,皮下脂肪組織由来のもの(SF)が内臓脂肪組織由来のものに比べて速かった。エストロゲンは,雌のSFの増殖を促進させたが,雄のSFには影響を示さなかった。SFはインスリンにより増殖の亢進がみられた。Zucker肥満ラットより採取した内臓脂肪組織のインスリンによる中性脂肪合成能の上昇は皮下脂肪組織に比べてより亢進していた。以上のことから,合併症をもたらす病的肥満の本態は,『内臓脂肪蓄積症』という概念でとらえるべきであり,その成因には,加齢,性,ホルモン特にインスリンなどの脂肪細胞をとりまく環境要因に加え,内臓脂肪組織に存在する脂肪細胞の増殖と分化およびホルモンに対する感受性が皮下脂肪細胞のそれらと異なっていることが関与すると思われた。なかでも,インスリン存在下で成熟した内臓脂肪細胞の中性脂肪の合成が,皮下脂肪細胞のそれに比べて亢進する性質が,内臓型肥満症の成因として重要であるものと推測された

慢性関節リウマチ(RA)の患者関節液中に多数存在する多形核白血球(PMN)は,関節軟骨マトリックス分解酵素を放出し,軟骨破壊に関与するものと考えられている。PMNゼラチナーゼのコラーゲンに対する作用を生化学的に検討するとともに,軟骨破壊の過程でのPMNの関与をin vivoで観察する目的で,コラーゲン関節炎発症カニクイザルの種々の破壊像を呈した関節を用いて病理組織学的および免疫組織化学的に検討した。病理組織学的には,滑膜細胞の増生,炎症細胞の侵潤,さらに軟骨表面には侵潤している細胞に分葉核を呈するPMNの存在が認められた。プロテオグリカン喪失の指標として用いたサフラニン0の染色性の喪失が軟骨表層で一部観察される破壊初期の段階では,プロテオグリカンの喪失に対応してPMNゼラチナーゼの侵潤が認められた。一方,軟骨破壊の進行した段階では,線維芽細胞ゼラチナーゼが軟骨内部の軟骨細胞に発現されていた。代表的な炎症因子であるIL-1は,破壊の進行とともに軟骨内部の軟骨細胞においてIL-1の発現がみられた。軟骨破壊の進行過程では,PMNゼラチナーゼ等PMN由来酵素が関節軟骨表層から侵潤し軟骨マトリックスを分解する。これによりIL-1などのサイトカインが容易に内部に侵入し軟骨細胞を刺激し,刺激された軟骨細胞は自らも軟骨マトリックス分解酵素を産生し内部からも破壊が進行するものと推測され,PMNが軟骨破壊初期段階で大きく関与すると考えられた。また,一方では,PMNゼラチナーゼはin vitroでXI型コラーゲンを分解することが明らかとなった。, To elucidate how and what extent PMNs are involved in cartilage destruction in vivo, histological and immunohistochemical studies were carried out in joint tissues at various stages of c

ヒトサイトケラチン19に対する2種のマウスモノクローナル抗体,KS 19.1とBM 19.21を用いたワンステップサンドイッチ固相法radioimmunoassay (RIA)を使用して,健常日本女性および男性の血中cytokeratin fragment 21-1 (CYFRA 21-1)を測定,正常値およびカットオフ値(平均値+2SD)を検討した。また,月経周期における血中値の変動,さらに妊娠時血中値の変化,および陽性率を妊娠初期,中期,後期に分けて検討した。分娩時,母体血,羊水,臍帯動静脈血,胎盤後貯留血液および産褥3日目の母体血を採取,各検体におけるCYFRA 21-1を測定し,その産生源および血中値半減期についても考察を加えた。著者らはすでにCYFRA 21-1の婦人科悪性腫瘍に対する腫瘍マーカーとしての意義を報告したが,本論文は産婦人科領域における新しいサイトケラチン関連腫瘍マーカーのカットオフ値,月経周期および妊娠・分娩時における血中値変動等,基本的なデータに関する報告である。, Two murine monoclonal antibodies, KS 19.1 and BM 19.21, have recently been established against a human variant of cytokeratin 19. Using these monoclonal antibodies, a solid phase radioimmunoassay (RIA) based on the simultaneous sandwich principle was constructed. With the use of this RIA, we measured cytokeratin fragment 21-1 (CYFRA 21-1) concentrations in serum and amniotic fluid obtained from normal, healthy, nonpregnant or pregnant Japanese women (NHNJW or NHPJW). The aim of this study was to investigate the serum CYFRA 21-1 cut-off value in NHNJW, fluctuations of the CYFRA 21-1 level during the menstrual cycle, changes of the maternal CYFRA 21-1 level with gestation, and the CYFRA 21-1 levels in the umbilical blood and amniotic fluid. The present study thus obtained first fundamental data on CYFRA 21-1, a newly established cytokeratin-related tumor marker, in normal, healthy nonpregnant or pregnant women.

上皮性細胞由来のサイトケラチンは癌組織にても広く分布し,腫瘍マーカーとしての臨床応用が試みられている。本研究では新しく開発された2種のサイトケラチン関連腫瘍マーカー,cytokeratin antigen (CKA)とcytokeratin fragment 21-1 (CYFRA 21-1)についてその臨床的有用性を産婦人科領域において汎用されているcancer antigen 125 (CA 125)やtissue polypeptide antigen (TPA)と比較検討した。子宮頸癌,内膜癌および卵巣癌44例における治療前血中高値率(陽性率)はCYFRA 21-1 56.8%,CA 125 50.0%,TPA 45.5%ならびにCKA 13.6%で,特に卵巣癌,子宮内膜癌においてCYFRA 21-1は70.0%および53.8%とCA 125に匹敵する陽性率を示した。さらにCYFRA 21-1はTPAやCA 125が陰性である婦人科癌のそれぞれ11.4%および6.8%において陽性を示した。一方,婦人科良性疾患40例における偽陽性はCKA,CYFRA 21-1およびTPAでは見られなかったが,CA 125では症例の35.0%に達した。また,肝炎や肝硬変における陽性率はTPAおよびCKAではそれぞれ23.0%,52.9%に達し,肝障害を惹起する抗癌剤使用例のモニターリングマーカーとしては不適切であると思われた。以上より,CKAは産婦人科領域の腫瘍マーカーとしては不適当であるが,CYFRA 21-1はCA 125やTPAの補助的な,あるいはそれに取って替わる有望な腫瘍マーカーと考えられた。, Cytokeratins are widely distributed in epithelial cells and carcinomas. We investigated the clinical significance of two new cytokeratin-related tumor markers, cytokeratin antigen (CKA) and cytokeratin fragment 21-1 (CYFRA 21-1) in patients with gynecologic malignancies by comparison with tissue polypeptide antigen (TPA) and cancer antigen 125 (CA 125), which are widely used tumor markers for endometrial and ovarian cancers. The pretreatment positivity rates were 13.6-1.527023or CKA, 56.8 0.000000or CYFRA 21-1, 45.5-1.520622or TPA and 50.0 0.000000or CA 125 in 44 patients with gynecologic malignancies (cervical, endometrial and ovarian cancer). The positivity rates for CYFRA 21-1 and CA 125 were almost equal at 53.8-61.5 0x1.93ab809308098p-1021nd 70.0 0n endometrial and ovarian cancer, respectively. However, positivity for CA 125 reached 35.0 2694016n 40 patients with ovarian cysts, uterine myoma or endometriosis. Furthermore, CYFRA 21-1 was positive in a respective 11.4 0x1.bd82dbff85498p-1022nd 6.81114100230f the patients with malignancy, in whom TPA or CA 125 were not elevated. This study concludes that as a gynecologic tumor marker, CYFRA 21-1 is quite useful in sensitivity and specificity, while CKA is not promising.

動脈硬化(粥状硬化)症の動脈ではリン脂質の増加が認められ,phosphatidylcholine (PC)の合成の亢進が報告されているが,未だ,動脈壁でのリン脂質合成の調節に関する検討はなされていない。de novoのPC合成経路の最終段階の酵素1,2-diacylgylcerol:CDP-choline cholinephosphotransferase (CPT) (EC 2.7.8.2)の諸性質について検討し,動脈硬化症関連の病態における動脈での活性を測定した。さらに,動脈硬化症での活性の変化についてその機序を,再構築系を用いて検討した。CPTはmicrosomeに局在する膜結合性酵素で,膜に結合し存在することが活性に必要であり,sonicationや高濃度のdetergentで活性の著明な低下が見られた。この酵素反応の終産物であるPCによる活性の抑制はなく,むしろ活性は上昇することから,本酵素の活性には膜のリン脂質が必要と考えられた。生理的には加齢とともに動脈のCPTの活性は低下し,加齢での動脈壁の相対的PCの低下を説明すると考えられた。病態では動脈壁に脂質が沈着するような変化がある時,CPT活性は上昇し,脂質沈着と密接に関連し,動脈硬化動脈でのPC増加は本酵素の活性亢進に基づくことが判明した。microsomeをlysosomeで処理したLDLとともにpreincubationすることにより,そのCPT活性は2倍に上昇し,可溶化したmicrosomeをcholesterolを含有するPC liposomeと再構築すると活性の上昇を示した。以上より膜結合性の本酵素は膜の状態により活性が変化し,動脈硬化動脈での活性上昇は外因性に細胞内に浸入したcholesterolが膜内に増加し,そのことが,本酵素活性を上昇させるように調節していると推測された。, To clarify the mechanism of the increase in phosphatidylcholine (PC) in atheromatous lesion, the properties of arterial cholinephosphotransferase (CPT) (EC 2. 7. 8. 2), the enzyme in the last step of the de novo PC synthetic pathway, were investigated in rat and rabbit. This enzyme is located in the microsomal fraction and its activity requires binding to the microsomal membranes. Phosphatidycholine (PC), the endproduct of the reaction, does not inhibit but rather activates the CPT activity; polyenePC makes this activation more remarkable. The membrane PC seems to play an important role in the activity of CPT. The arterial CPT is significantly increased in pathological conditions where lipid deposition in arterial walls or atheroma formation is induced such as hypercholesterolemia in rabbits or hypercholesterolemia plus tocopherol deficiency in rats. The increase in PC in atherosclerosis seems to be due to the increase in the activity of this enzyme. In reconstituted microsomes, increase in cholesterol in the microsome enhanced the CPT activity. The activity of this membrane-bound enzyme is regulated by the state of the microsomal membrane, and the increased CPT activity in atheromatous artery is thought to be due to exogenously increased cholesterol in arterial cells, which might stimulate the CPT activity. Superfluous increase in cholesterol in the membrane might impair the membranous functions through reduction in fluidity, the increase in the activity is thought to be a biological reaction as a protection against the reduction of fluidity.

Human chorionic gonadotropin-β subunit (hCG-β)の尿中への分解産物,urinary gonadotropin peptide (UGP)を健常婦人,各種良性・悪性婦人科疾患患者において測定し,以下の結果を得た。健常日本婦人におけるUGPの暫定的カットオフ値は平均+2SDより3.8fmol/mlであり,尿中hCG-β core fragment (βCG)と高い相関(r=0.9433)を示した。子宮頸癌では治療前の陽性率は18.9%に留まったが,卵巣癌,子宮内膜癌では58.3%に達した。一方,子宮筋腫,卵巣嚢腫,子宮内膜症等の良性婦人科疾患での偽陽性率はそれぞれ10,0,12%で,本腫瘍マーカーの高い特異度が示された。卵巣癌と子宮頸癌ではそれぞれcancer antigen 125 (CA 125)およびsquamous cell carcinoma-associated antigen (SCC)が最も高い陽性率を示したが,他に有用な腫瘍マーカーの無い子宮内膜癌ではUGPが最も高率で,また他の腫瘍マーカーとのコンビネーションアッセーにより陽性率の上昇も見られ,同悪性腫瘍におけるUGPの臨床的有用性が認められた。, Measurement of urinary gonadotropin peptide (UGP), a breakdown product of human chorionic gonadotropin-β subunit (HCG-β), was performed in healthy nonpregnant women and patients with various benign and malignant gynecological diseases. The tentative cut-off value for UGP in healthy nonpregnant Japanese women was 3.8 fmol/ml(mean+2SD), and UGP levels showed a strong correlation with urinary HCG-β core fragment (βCF) levels (r=0.9433). The UGP positivity rate was 18.9 0n cervical carcinoma patients before therapy and 58.3-1074738192n those with ovarian carcinoma and endometrial carcinoma. The false-positive rate in patients with benign gynecological diseases such as uterine myoma, ovarian cyst, and endometriosis was 10, 0, and 12%, respectively, indicating the relatively high specificity of this tumor marker. Ovarian and cervical carcinoma patients showed higher positivity rates for cancer antigen 125 (CA125) and squamous cell carcinoma-associated antigen (SCC), respectively. In contrast, UGP showed the highest positivity rate in endometrial carcinoma, for which there has previously been no useful tumor marker. In addition, the combination of UGP with other tumor markers increased the positivity rate for endometrial malignancy.

The twy (tiptoe-walking-Yoshimura) mouse is a mutant showing multiple osseous lesions accompanied by accelerated bone remodeling. In the calvarium, periosteal bone formation was activated until about 6 weeks of age, and high-turnover osteoporosis developed after maturation. To demonstrate the collagen metabolism in high-turnover osseous tissue, bone collagenase secreted by twy mouse calvariae was quantitatively analyzed in explant culture. During the first 3 days of culture, the amounts of collagenase secreted by twy bones (39.1±9.9mU/calvarium) were significantly greater than those secreted by normal bones (10.1±8.8mU/calvarium) (p, 遺伝性骨軟骨異常マウス(twyマウス)では骨代謝回転の亢進を基盤にした多彩な骨病変が発現する。頭蓋骨では外骨膜性骨形成が生後6週頃まで亢進状態にあり,それ以後は骨粗鬆化の進行が観察される。本研究では高回転骨組織におけるコラーゲン代謝の解析を目的とし,twyマウスおよびICRマウス(コントロール)の頭蓋骨を器官培養して産生された骨コラゲナーゼの活性を定量した。その結果,培養初期(0-3日)にtwyマウス骨組織から分泌されるコラーゲナーゼの活性はコントロールに比し有意に高値を示した。副甲状腺ホルモンおよびヘパリンに対する応答性にはtwyマウスとコントロールとの間で有意な差は認められなかった。以上より,twyマウス骨組織では生体内においてもコラーゲナーゼの分泌が亢進状態にあると考えられた。また本酵素はtwyマウスにおける高回転型骨粗鬆症の発症に重要な役割を果たしていることが推察された。

A sandwich enzyme immunoassay (EIA) was newly developed for placental protein 14 (PP_), whose localization was clearly demonstrated in the placental villi, decidua and nonpregnant endometrium. Using this assay, serum PP_ concentration was measured in healthy individuals, normal pregnant women, and patients with gynecologic diseases. The mean serum PP_ level in nonpergnant women was 5.0ng/ml, which was significantly higher (p level was influenced by hormonal environment, especially by progesterone. In normal pregnant women, serum PP_ level was significantly higher in the first trimester (360ng/ml, p in decidua or villi might also be influenced by hormonal environment and/or pregnancy-or placenta-associated substances. Among patients with untreated gynecologic diseases, endometriosis patients showed a significantly higher mean serum level (19.6ng/ml, p level was not elevated in gynecologic malignancies. Furthermore, the mean serum PP_ level was far lowered after successful treatment (4.4ng/ml) than that before treatment. PP_ was supposed to be a new possible index of the activity of endometriosis., 胎盤絨毛,脱落膜および非妊娠子宮内膜において明瞭な局在の認められる胎盤蛋白PP_に対してサンドイッチ酵素免疫測定法(EIA)を開発し,これを用いて健常男性25名,排卵周期を有する健常女性85名,正常妊婦65名,治療前各種婦人科疾患患者238名,治療後子宮内膜症患者20名の血中PP_濃度を測定した。規則的な排卵周期を有する女性における血中平均平均値は5.0ng/mlで,男性の平均値より有意に高値であった(p値は分泌期,特に月経直前に高値(10.5ng/ml)であり,排卵期に最低値(1.7ng/ml)を示した。すなわち,非妊娠時の血中PP_濃度と内分泌環境,特にプロゲステロンとの強い関連が示唆された。正常妊婦における血中値は初期に有意に高く(p濃度はhuman chorionic gonadotropin (hCG)と同様の変化を示し,脱落膜或いは絨毛におけるPP_の産生も,非妊娠時同様内分泌環境あるいは他の妊娠胎盤関連物質の影響を受けている可能性が示唆された。婦人科疾患患者の平均血中PP_濃度は子宮内膜症を除いてすべて低値であり,悪性疾患では6.0ng/mlないし7.1ng/ml,良性卵巣腫瘍では9.2ng/ml,子宮筋腫では11.1ng/mlであった。治療前子宮内膜症における平均値は19.6ng/mlで,他疾患よりも有意に高かった。一方,治療後子宮内膜症では4.4ng/mlと,血中PP_濃度の明らかな低下が認められた。これらの結果より,子宮内膜症の治療後の経過観察におけるPP_の有用性が推測された。

従来より高血圧症の診断および治療は,外来随時血圧に基づき行われているが,必ずしも日常生活中の血圧を反映していないのではないかとの反省が起こっている。そこで,近年開発された非観血的自動血圧計を用いて,本態性高血圧症152例(20～69歳)を対象として24時間血圧測定を施行し,1)外来血圧値と24時間血圧値の関係,2)外来血圧値および24時間血圧値と高血圧臓器障害の関係,3)定量的運動およびnoradrenaline負荷に対する昇圧反応性と24時間血圧値の関係,さらに4)降圧薬の24時間血圧値に対する影響を調べ,24時間血圧測定の有用性と限界について検討した。その結果,1.有用性については,1)24時間血圧平均値と外来血圧値の差が大なる症例の発見が可能である。2)夜間睡眠時の血圧の測定が可能である。3)24時間血圧平均値は外来血圧値よりも高血圧臓器障害をより反映している。4)降圧薬の特徴を明らかにすることが可能である。2.限界については,1)不眠のために睡眠時の血圧の評価が困難な症例がある。2)短時間の血圧変化は推測不可能であることが明らかとなった。以上から,24時間血圧測定を外来随時血圧に合わせて行うことは,よりきめ細かな適切な高血圧症の評価および治療に結びつくと考えられる。, The diagnosis and treatment of hypertension have been based on the blood pressure (BP) value measured momentarily in the physician's office (office BP). However, the BP value may not represent an average BP in patien's daily life. In the present study, clinical usefulness of ambulatory 24-hr measurement was evaluated in 152 patients with essential hypertension determined by office BP. Twenty-four-hr BP was recorded by an automatic noninvasive manometer in every 30 minutes, and following analyses were performed; 1) ralationship between office and 24-hr BPs, 2)

近年,漢方薬の使用及びその癌に対する併用療法の報告が増加している。今回,Lewis肺癌において,代表的駆瘀血剤である桃核承気湯の単独使用の効果について肺転移巣及び移植巣において検討した。あわせてシスプラチンとの比較検討も行なった。Lewis肺癌細胞10^5個をC57BLマウスのfoot padに移植,10日後に移植反対側の大腿部を外科的に切除。その後桃核承気湯については1g/Lを自由経口摂取させ,シスプラチンについては2mg/kgを翌日腹腔内注入した。10日後肺転移巣,移植巣,及びリンパ球幼若化試験について対照と比較した。また同時に病理学的検索も行なった。肺転移数はI群:対照7.2個,II群:桃核承気湯0.5個,III群:シスプラチン2.7個,移植巣の大きさはI群:19.3±13.7g,II群:5.1±3.4g,III群:25.0±14.4gといずれもII群において有意に腫瘍の進行を抑制した。またリンパ球幼君化試験(S.Index)でもI群:0.845±0.305,II群:2.17±1.55とII群の細胞免疫活性の優位性を示唆した。病理学的には,移植巣では積極的に差異は見出されなかったものの,転移巣においてはI群に比してII群では変性を示す癌細胞が混じている所見が見られた。以上より,桃核承気湯は実験的肺癌の進行および肺への転移を抑制し,それに関して細胞性免疫活性の関与する可能性が示唆された。また特に転移に関して,新しい概念である瘀血の重要性が強く示唆された。, Recently, many studies have been performed to confirm the effects of some traditional Chinese medicines on cancers. However, most of those are of combined action with anti-cancer agents. In this study, we investigated the independent effect of "Tokakujokito", a representative medicine used for the state of "Oketsu", which is the pathogeny in traditional Chinese medicine and is almost equivalent to the injury of microcirculat

Human T-cell lymphotropic virus type-1(HTLV-1)母児垂直感染の診断をpolymerase chain reaction(PCR)法を用いた末梢リンパ球中のHTLV-1 provirus検出によって行なった。対象はPCR法にてHTLV-1 provirusが確認されたキャリア妊婦24名の出生児38名(母乳栄養児13名,人工栄養児25名)である。母児垂直感染診断はまず抗体測定を行ない次にnested double PCR法を用いてprovirus検出を行なった。母乳栄養児13例中2例(15.4%)が抗体,PCRともに陽性であり他の11例はともに陰性であった。2例のPCR陽性例はともに1年以上母乳保育されており,一方6カ月以内の母乳保育例ではPCR陽性例はなかった。人工栄養児25例中抗体陽性例はなかったがPCR法で4例(16.0%)が陽性であった。過去の報告とは異なり両栄養法のあいだでPCR陽性率に差が見られず,短期間の母乳保育が感染率を上昇させないことが示されるとともに母乳以外の感染経路が示唆された。また,特に人工栄養児において,抗体陰性キャリアーの存在が示された。, Materno-infant transmission (MIT) of human T-cell lymphotropic virus type-1 (HTLV-1) in 38 infants delivered by 24 pregnant carriers was identified by detecting HTLV-1 provirus insertion in lymphocyte DNA using the polymerase chain reaction (PCR). The 38 infants included 13 breast-fed and 25 bottle-fed. First, MIT was screened by antibody mesurement, then provirus detection was performed by the nested double PCR. Two (15.4%) of the 13 breast fed infants were both seropositive and PCR-positive and other 11 were both negative. Both of PCR-positive infants were breast fed for more than a year and no one was PCR-posivive among who were breast fed for less than 6 months. Although no one was seropositive in 25 bottle fed infants, 4 (16.0%) were PCR-positive. No significant difference was found in the PCR-positivity rate between the breast-fed and bottlefed groups. It is suggested that br

We established an enzyme immunoassay for human fetal liver P-450 (P-450HFLa) by utilizing the avidin-biotin-peroxidase reaction and determined that the normal range was, 胎児型チトクロームP-450(P-450HFLa)について,avidin-biotin peroxidase法を利用したsandwich enzyme immunoassayを開発し,健康婦人,妊婦,婦人科患者(良性,悪性)の血中値,臍帯血および羊水を測定し,以下の結果を得た。1)健康非妊婦と良性卵巣腫瘍および子宮筋腫の患者の95パーセンタイルである3units/mlを暫定的なカットオフ値とした。2)妊婦血清の検索では,妊娠初期と後期に血清値が上昇する二峰性を示し,分娩後は,急速に非妊時のレベルに復した。3)婦人科疾患患者血清の検索では,良性疾患で,良性卵巣腫瘍0%(0/8),子宮内膜症71%(5/7),子宮筋腫10%(1/10)と子宮内膜症での陽性率が,高かった。これに対し,悪性疾患全体では95%(38/40)と高い陽性率を示し,疾患別では卵巣悪性腫瘍100%(14/14),子宮内膜癌100%(17/17),子宮頸癌78%(7/9)であった。以上のことより,P-450 HFLaは,婦人科癌や子宮内膜症のスクリーニングマーカーとして臨床応用の可能性が示唆されるが,その血中値の上昇幅は比較的狭く,治療のモニタリングマーカーとしては不適であると考えられた。また,このことは,すでに報告した高い組織局在率と合せ考え,immunodetectionの標的マーカーとして,臨床応用の可能性が示唆された。

522例の男性を,外来血圧値により正常血圧群,境界型高血圧群,固定型高血圧群に分類し,安静時および運動,交感神経作動薬負荷時血行動態に対する,年齢と血圧値の影響を検討した。安静時血行動態では,心係数は若年境界型高血圧群で同年代の正常血圧群に比して大であり,高齢高血圧群で低下していた。全末梢抵抗は加齢により増大し,正常血圧群に比して,高血圧群で高値であったが,固定型高血圧群では若年時から高値であった。安静時血漿ノルアドレナリン濃度は加齢により増大したが,正常血圧群と高血圧群で差はなかった。運動時の血圧の上昇度および心係数の増加度は,同年代の正常血圧群に比し,若年境界型高血圧群で大であり,高齢高血圧群では低下していた。運動時の全末梢抵抗の減少度は,高齢者,高血圧群で大であった。負荷終了時の全末梢抵抗の絶対値は加齢により増大し,若年境界型高血圧群では同年代の正常血圧群と差がなく,固定型高血圧群では正常血圧群に比して高値であった。運動時の血漿ノルアドレナリン濃度の増加度は加齢により増加し,高血圧群で正常血圧群より大であった。外因性ノルアドレナリンに対する昇圧反応は加齢により増大し,固定型高血圧群では若年時から亢進していた。以上の結果,本態性高血圧症の血圧維持機構に,ストレスに対するノルアドレナリンの過剰分泌,α反応性の亢進,血管壁の拡張性の低下などが関与しており,これらの因子が加齢により変化していることが示された。また,安静時および運動時血行動態は,加齢あるいは血圧値により変化し,本態性高血圧症の治療に際して,運動時の血行動態を考慮することにより,よりきめ細かな治療法が選択できるものと思われた。

子宮内膜癌発生過程に性ステロイドホルモンの関与が示唆されている。そこで子宮内膜癌,子宮内膜増殖症および年齢をマッチさせた対照の3群について血中性ステロイドホルモン,尿中17KSの排滑を閉経前,後の症例でそれぞれ検討した。(1)閉経前の内膜癌症例の血中エストロゲン値は高値で,血中プロゲステロン値は低値であった。(2)閉経後の内膜癌症例の血中エストロゲン値は若干高値であるも,内膜増殖症例でさらに高値を示した。(3)尿中17KSの排泄は3群間で差はみられなかった。(4)高分化型腺癌(G1)でエストロゲンリセプター(ER),プロゲステロンリセプター(PR)は高値を示した。(5)内膜癌のなかには,血中エストロゲン値も上昇せず,ER,PRの検出されない症例もみられた。以上より,閉経前の症例ではエストロゲン/プロゲステロン(E/P)比の上昇が内膜癌の発生に関与していることが,また閉経後の症例では長期間にわたる血中エストロゲン値の上昇が内膜癌発生の高危険因子の一つであることが示唆された。一方,血中エストロゲンリセプターの検索より,内膜癌の中にはステロイドホルモン非依存性癌がある可能性が示唆された。, We examined serum levels of steroid hormones and urinary levels of 17 KS excretion in pre-and postmenopausal women with endometrial carcinoma and with endometrial hyperplasia and in age-matched controls. The results are as follows: 1) The serum estrogen levels of premenopausal patients with endometrial carcinoma were significantly higher and the serum progesterone levels were siginificantly lower than those of the other groups. 2) The serum estrogen levels of postmenopausal patients with endometrial carcinoma were slightly higher than those of controls, although the highest levels were found in the patient group with endometrial hyperplasia. In addition, the ser

肥大型心筋症(HCM)における心形態,壁運動性からみた心筋収縮能の評価,T_2緩和時間からみた組織性状の検討,心筋高エネルギー燐酸化合物代謝異常の評価を行うと共にそれぞれの関係を調べる目的で,HCM 12例を対象としてMRIと^P-MRSとを施行した。心電図同期スピンエコー法MRI上の収縮末期・拡張末期左室横断像から拡張期左室中隔厚,左室中隔厚増加率,拡張末期容積,収縮末期容積,一回心拍出量,左室駆出分画,fractional shortening値を求めた。また, T_2計算画像よりT_2値を計測した。^P-MRSは領域選択法(ISIS)を用い,得られたスペクトルのピーク高計測値よりPCr/γ-ATPを計算した。結果として,健常者およびHCMのPCr/γ-ATPは,それぞれ,2.17±0.26, 1.63±0.19とHCMにおいて有意に低値を示した。健常者およびHCMのT_2値は,それぞれ,48.3±0.9msec, 50.3±2.8msecとHCMにおいて有意に高値を示した。また,収縮末期容積,左室駆出分画,左室中隔厚,左室中隔厚増加率,posteroseptal, anteroseptal, anterolateral, posterolateral領域のfractional shorteningに有意差を認めた。HCMでの検討としては,PCr/γ-ATPとT_2値,左室駆出分画,anteroseptal・anterolateral領域のfractional shorteningとの間に有意な逆相関が認められた。以上より,高エネルギー燐酸化合物代謝異常と,心筋性状,左室駆出分画,fractional shorteningとの間には関連性があり,磁気共鳴検査はHCMの臨床的研究に有用であると考えられた。, To evaluate the correlation of the high energy phosphate metabolism with T_2 relaxation time and left ventricular function, twelve hypertrophic cardiomyopathy patients were examined with magnetic resonance imaging and phosphorus-31 magnetic resonance spectroscopy. End-diastolic septal thickness, percent systolic thickening of the septum, end-diastolic volume of left ventricle, stroke volume, left ventricul

総合健診を受診した30歳から59歳の健常男性を対象として,日常の運動習慣とその変化が身体組成,運動耐容能および脂質代謝におよぼす影響を検討した。その結果,1.初回健診時運動負荷試験を下肢または全身疲労で終了した2029名では,スポーツ運動の回数が多い群ほど運動耐容能が高くHDLコレステロールも高かった。また規則的な運動習慣のない群でも,日常努めて歩くようにしている群は歩かない群より運動耐容能が高かった。2.規則的な運動習慣を持たず,高血圧の家族歴がない1484名では,体脂肪率の大きい群ほど運動耐容能は低く,同一運動負荷時の心拍数と収縮期血圧は高かった。また体脂肪率の大きい群ほど総コレステロールが高くHDLコレステロールは低かった。3.初回健診時,体脂肪率が年代の標準偏差以内にあり,1年後再受診し1年間食習慣に変化のなかった303名では,日常の運動量が増加した群で体重,体脂肪量が減少し,運動耐容能が増大し,同一運動負荷時の心拍数と収縮期血圧は低下し,HDLコレステロールが増加した。また運動量の増加した群で体重の減少した群と増加した群を比較すると,いずれの群でも運動耐容能は増大し,同一運動負荷時の心拍数と収縮期血圧は低下した。以上より規則的な運動習慣のない中高年男性が日常の運動習慣を変えることのみによって身体組成や脂質代謝,運動耐容能が変化することが明らかになった。, The effects of changing daliy exercise habit on body fat, serum lipids and sysmptom-limited maximal exercise test (treadmill by Balke protocol) were evaluated in healthy males at an interval of one year. The results were as follows: 1. Study 1: Subjects who exercise regularly (3～/week) showed higher endurance power and HDLC and less body fat. Compared to inactive subjec

ヒト肺腺癌由来細胞株培養上清抽出物を免疫して得られた2種のモノクローナル抗体(MA54, MA61)が認識する腫瘍マーカーcancer antigen 54/61 (CA54/61)について,産婦人科領域における基礎的臨床的検討を行ない,以下の成績を得た。なお,血中値測定は,double determinant sandwich enzyme immnunoassay 法にて,又免疫組織学的検索は,avidin-biotin immunope-roxidase法によった。1)正常人104名における血中平均値は6.98u/ml (SD:4.56u/ml)で,正常上限は,mean+3SDより20.0u/mlに設定された。2)妊娠各期を通じて血中CA54/61値は非妊娠時に比べ上昇を認めなかったが羊水中では平均220.9u/mlの異常高値であった。3)婦人科良性疾患91例における治療前血中陽性率は2.2%に留まったが,特に粘液性嚢胞癌では66.7%であった。臨床進行期が進むにつれて陽性率の上昇傾向が見られた。またCA125とのコンビネーションアッセイにおいて,陽性率が上昇し,両腫瘍マーカー間での低い相関係数(r=0.38)と考え合わせ,卵巣腫瘍におけるCA54/61, CA125のコンビネーションアッセイの臨床的有用性が示された。4) MA54, 61共に各種悪性疾患において50%以上の局在率が得られ,粘性嚢胞腺癌では83.3%の高局在率で,組織局在,血中値間で乖離は認められなかった。5)胎盤では絨毛内胎児血管内皮細胞に,卵膜内組織球に明瞭な陽性所見が得られ,CA54/61がoncofetoplacental antigenである可能性が示唆された。, The supernatant extract from the culture of the human pulmonary adenocarcinoma cell line (C1509) was inoculated in mice for immunization and two different monoclonal antibodies (MA54 and MA61) were obtained. Using these monoclonal antibodies, we performed fundamental investigation into the antigens that are detected by MA54 and MA61 (cancer antigen 54/61; CA54/61) in various cases seen in the field of gynecology and obstetri

近年,境界型高血圧については多くの報告があるが,境界型高血圧のうちどのようなタイプが固定型高血圧に移行するかについては一定の見解はない。そこで著者は男子本態性境界型高血圧症101名(35才以下の若年者56名,36～65才の中壮年者45名)を対象として,臥位自転車エルゴメーターによる運動負荷試験,noradrenalineおよびisoproterenolによる薬物負荷試験を行い,その後5年間のfollowup studyを行った。その結果,5年の経過で境界型高血圧より固定型高血圧に移行したものを移行群,移行しなかったものを非移行群とすると,1)移行群は非移行群に比し境界型高血圧の時の運動負荷に対する収縮期血圧の昇圧反応性が大であった。2)1.25W/Kg 6分間の単一運動負荷により収縮期血圧が35歳以下の若年で210mmHg以上に,36～65歳の中壮年で190mmHg以上に上昇したものはそれぞれ76%,87%が5年以内に固定型高血圧に移行した。3)noradrenaline負荷に対する昇圧反応性は,特に若年において移行群が非移行群に比して大であった。4)isoproterenol負荷に対する心拍数の増加度および拡張期血圧の減少度には,移行群,非移行群の間に差は認められなかった。以上より,境界型高血圧のうち運動負荷に対する収縮期血圧の上昇度が大きいものは5年以内に大部分のものが固定型高血圧に移行することが明らかとなり,また,その機序の一部に特に若年では交感神経性α受容体刺激に対する反応性の亢進が関与することが明らかとなった。, To clarify the factors predicting the prognosis of borderline hypertension, cardiovascular responses to exercise test and to the infusion of sympathomimetic drugs were analyzed in 101 male borderline hypertensives for 5 years. The subjects were classified into young (～35 yrs old) and middle aged (36～65 yrs old) group s

千葉県内の健康妊婦17,061名,非妊婦7名,キャリア家族139名,キャリアの前子41名においてanti-human T cell lymphotropic virus-type 1 antibodies(anti-HTLV-1 antibodies)検出のスクリーニングを施行した。スクリーニングは,particle aggultination (PA)法,enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)法,indirect immunofluorecent (IF)法,Western blotting (WB)法によって行った。プロウイルスの検出は,polymerase chain reaction (PCR)法によって行い,スクリーニング法としての抗体測定の有用性を検討した。又,健康妊婦及びその家族を対象に免疫学的検索を行い,妊婦のキャリア率,家族内感染状況を検討した。更にキャリア妊婦61名及びその出生児41名のフォロウアップを行い,授乳期間,抗HTLV-1抗体力価,抗P40^抗体が母児感染のリスクファクターになり得るかを検討した。妊婦のHTLV-1スクリーニングはPA法かEL ISA法にて一次スクリーニングを行い,陽性例にはIF法及びWB法にて確認試験を実施,解離例のみPCR法にて再検するのが実地臨床上妥当と思われた。家族内抗体保有率は母親が39.0%と高値を示し,垂直感染の重要性が再認識された。リスクファクターの検討では,授乳期間10ケ月以上の群で児キャリア化が認められ,又母抗P40^抗体陽性例の児キャリア化率は25.0%に達し陰性群の2.5%に比し高い傾向が認められ,本抗体が母児感染の指標になり得る可能性が示唆された。, Screening for anti-human T cell lymphotropic virus type-I antibodies (anti-HTLV-I antibodies) was performed in 17,061 healthy pregnant women, 7 nonpregnant women, 139 family members of carriers and 41 carrier offspring in Chiba Preferture, Japan. Screening was carried out using the particle agglutination (PA method), the enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA method,), the indirect immunofluorescent assay (IF method), and Western b

1983年より1990年までの8年間に千葉大学産婦人科で管理した胞状奇胎491例を対象とし,奇胎除去後血中human chorionic gonadotropin (hCG)値の推移をレトロスペクティブに検討して以下の結果を得た。また正常非妊娠婦人120例において血中hCG倍のcut-off値を検討した。(1)血中hCG値のcut-off値は95パーセンタイルより5.0mIU/mlに設定された。(2)奇胎除去後経過順調型の410例を対象に奇胎除去後の週数と血中hCG値を比較すると408例において5週10,000mIU/ml,8週1,000mIU/ml,15週100mIU/mlの基準を下回った。(3)侵入奇胎54例では前記の基準を全例が上回った。(4)奇胎除去後15週で血中hCG値がcut-off値以上を示した43例中5例(11.6%),20週では12例中4例(33.3%),24週では7例中3例(42.9%)が絨毛癌を続発した。(5)以上より奇胎除去後の血中hCGの基準を5週10,000mIU/ml,8週1,000mIU/ml,15週100mIU/ml,24週cut-off値以下と設定した。, Four hundred and ninty one patients had been registered at our department for the management of postmolar pregnancy during the 8 years from 1983 to 1990. Serum samples were serially obtained from the patients who gave informed concent, and stored at -80℃. Human chorionic gonadotropin (hCG) level was assayed in the stored serum samples to study retrospectively the exact change of serum hCG levels in the postmolar courses. In addition, blood was sampled from 120 normal, non-pregnant women to set the cut-off value of serum hCG levels. The gained results are as follows: 1) The cut-off value of serum hCG levels was set at 5.0mIU/ml (95th percentile). 2) Of the 491 patients, 74 (15.1%) and 7 (1.4%) women developed invasive mole and choriocarcinoma, respectively. 3) Based on the serial change of serum hCG levels in the women who did not develop the sequelae, the upper limit of serum hCG levels was set at 10,000mIU/ml, 1,000mIU/ml and 100mIU/ml at the time point of 5,8 and 15 weeks after molar evacuation, respectiv

C型肝炎ウイルスの母子垂直感染については異論のあるところで,現在までレトロスペクティブな研究報告が数例有るのみである。われわれは10人のC型肝炎ウイルスキャリア妊婦より生まれた12人の児を出生より経時的に経過観察し,胎内感染の起こり得ること,および乳幼児肝炎が生じる得る事をプロスペクティブに証明したので報告する。なお,C型肝炎ウイルス関連検査は抗体は抗C-100-3抗体,抗N-14抗体検出により,またウイルスRNAはnested reverse transcription PCRにより行った。, A few retrospective studies on the familial clustering of hepatitis C virus (HCV) have suggested the possibility of vertical transmission of HCV from the carrier mothers to their offspring. To confirm this possibility we prospectively followed up 12 infants (7 males and 5 females) born to 10 carrier mothers by testing anti-C 100-3/N-14 antibody (Ab), HCV-RNA and serum alanine and aspartate aminotransferase (ALT and AST). All of the 10 carrier mothers were positive for HCV-RNA with the reverse transcription polymerase chain reaction (RT-PCR). Follow-up was from 3 days to 15 months of age. Both anti-C 100-3 and N-14 Ab cleared by the age of 8 months in the 4 infants followed up for 8 to 15 months. One of these 4 infants became seronegative for anti-C 100-3 and N-14 Ab in 4 and 8 months of age, respectively, and became again seropositive for anti-C 100-3 Ab at age of 8 months. Anti-C 100-3 Ab persisted for 8-14 months of followup. HCV-RNA was positive persistently for 0 (cord serum)-8 months, and became undetectable at age 11 and 14 months. Serum alanin aminotransferase (ALT) elevation started at the age of 3 months and the value reached 180IU/1 at 8 months. Thereafter the value returned to normal and HCV-RNA became undetectable. This prospective follow-up study provides definite evidence of vertical transmission of HCV, and also suggests that HCV intrauterine infection is one source of establis

リポ蛋白リパーゼ(LPL)はカイロミクロンや超低比重リポ蛋白(VLDL)中の中性脂肪の水解反応を担う酵素である。その特徴として酵素であるLPLは水に溶けているが基質は水に不溶であることがあげられる。このような場合。反応を律速する因子としては酵素量だけでなく基質の界面面積や基質表面に対する吸着力などが問題になる。LPLの機能異常がその成因となる高カイロミクロン血症の成因を解明することは本酵素の機能を解析するうえで重要な手がかりを与えてくれると思われる。そこで,高カイロミクロン血症を呈し膵炎に反復罹患していた患者のLPLの機能を解析しそれに基づく治療法を確立し,その遺伝子解析を行いLPL酵素蛋白の変異部を明らかにした。本患者のへパリン静往後血漿(PHP)中にはLPL酵素蛋白が存在した。このLPLは水溶性基質であるtributyrinを水解するが,脂質界面を形成するTriton X-100にて乳化したtriolein(以下Triton X-100-triolein)に対して水解能を示さず超低比重リポ蛋白(VLDL)との結合も見られなかったことから脂質界面認識に異常を有すると考えられた。リゾリン脂質を用いてtrioleinを乳化し基質を作成したところ,患者LPLは結合し水解した。また中鎖中性脂肪(MCT)を用いてtrioleinを乳化し作成した基質にも水解活性を示した。本患者にMCTを経口投与しガスクロマトグラフィーを用いて脂肪酸分析を行った結果,投与されたMCTはカイロミクロンやVLDL中に取込まれていることが判明した。このとき血清中性脂肪値は著明に低下した。その機序として投与されたMCTの一部が基質のリポ蛋白中にとりこまれ,患者LPLによる中性脂肪の水解を促進する可能性が考えられた。本患者の末梢血リンパ球より採取したDNAを分析した

含有率1%のコレステロール食群(n=10,以下コ群),コレステロール飼料とエラスターゼ(897EL. U/kg/Day)を腹腔内投与したエラスターゼ使用群(n=9,以下エ群),正常飼料の対照群(n=13)に分け,20～24週間飼育した雄性家兎の脈波速度,大動脈壁弾性率,壁脆弱性を検討した。麻酔下で大動脈圧波,大腿動脈脈波を同時記録し,大動脈脈波速度を求めた後,上行大動脈,胸部下行大動脈下部から輪状切片を摘出し,壁厚(h),引っ張り試験での応力-長さ曲線から内圧100mmHg相当の大動脈壁単位断面積当り弾性率(E),Stiffness Parameterβ,および破断応力を求めた。コ群の脈波速度(636±57cm/sec)は,対照群(560±60)に比し有意に亢進し,上行大動脈の壁厚はコ群で対照群より増大し,壁厚との積,即ち,壁の硬さを示す弾性率(Eh)は,コ群(1.78±0.36×10^5dyn/cm)で対照群(1.43±0.23×10^5)に比し有意に増大した。βも同様の結果であった。コ群の破断応力は減少し,壁脆弱性を呈した。Eは,コ群で有意に低下したが,これは線維化が比較的軽度な初期の粥腫形成が影響したものと考えられた。エ群の上行大動脈は,hが増大し,Eも低下したが,他は,いずれも対照群,コ群の中間の値または対照群と同等の値を示した。粥状変化が少なかった下行大動脈では,h,E,Eh,β,破断応力とも,3群間に有意差を認めなかった。以上,コレステロール負荷による大動脈壁粥状変性では,壁厚増大,壁硬化,壁脆弱化を認め,エラスターゼ使用により,これらの変化は抑制された。また粥状硬化初期には,Eがむしろ減少する可能性のあることを示した。, The physical properties of atherosclerotic aortic wall were studied in 10 rabbits fed 1% cholesterol diet (C-group), 9 fed 1% cholesterol diet with peritoneal administrations of elastase (897ELU/kg/day) (E-group) and 13 fed normal di