Kazuhiro Toyota, Tsuguo Fujitaka, Michinori Arita, Kiyohiko Dohi, Masazumi Okajima, Toshimasa Asahara, Yoshiyuki Masaoka, Masahiro Nakahara, Yasutomo Ojima, R. Kobayashi, and Katsufumi Kawahori
過去16年間に当科で手術を施行した75歳以上の高齢者大腸癌は60例で,50歳以上70歳未満の対照者群319例,39歳以下の若年者群18例の内,主に単発癌を比較の対象とし臨床的特徴と遠隔成績を検討した.高齢者群は,(1)占拠部位では右側結腸に有意に多かった.(2)壁深達度は,漿膜内にとどまる症例が多く比較的浅い傾向.(3)リンパ節転移陽性率は低い傾向.(4)手術直接死亡例はないが他病死例が多く,他病死を除いたら5年生存率は対照者群と比べて差はなかった.高齢者大腸癌は,壁深達度は浅く,リンパ節転移率も低い傾向にあり,D2もしくはD3の適切なリンパ節郭清にて根治度AまたはBの切除が可能であり,高齢といえども患者の状態の許す限り積極的に対照者群と同様の郭清を伴った根治切除術を心がけるべきである.高齢者では術前より全身状態の悪い症例が多く,合併疾患の術前後の管理を充分に行えば対照者群と同等の成績が期待できる.