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1983年より1998年までに当科に入院した原発性肺癌755例のうち, 先行肺疾患それぞれの合併率と先行肺疾患合併肺癌の臨床的特徴を検討した.最も合併頻度が高かったのは肺結核で125例 (16.6%), 次いで肺気腫81例 (10.7%), 問質性肺炎30例 (4.0%), 気管支喘息14例 (1.9%), 珪肺11例 (1.5%) の順であった.肺気腫は合併率が年々急激に増加したが, 呼吸機能には変化はなかった.肺気腫, 間質性肺炎, 肺結核の合併は男性に多く (P

1983年より1998年までに当科に入院した原発性肺癌755例, 762病変を年齢によって40歳以下, 41～50歳, 51～60歳, 61～70歳, 71～80歳, 81歳以上の6群に分i類し, 各グループの臨床的特徴について検討した.組織型では若年齢であるほど腺癌の比率が高く, 高年齢になるほど扁平上皮癌の比率が増加していた.この傾向は男性, 喫煙者群において明らかであったが, 女性, 非喫煙群では年齢とは無関係に腺癌の比率が高かった.発見動機iでは40歳以下において有症状受診例が約76%と高く, 81歳以上では他疾患治療中の症例が多く見られた (p

1983年より1998年までに当科に入院した原発性肺癌患者755例, 762病変の組織型の変遷とその背景因子について検討した. 便宜的に前半8年間 (1983～1990: 1980年代) と後半8年間 (1991～1998: 1990年代) に分けて比較した. 1980年代と1990年代では, 原発性肺癌総患者数, 男女比, 喫煙率, 発見動機, 臨床病期, 治療法に大きな変化はなかったが, 平均年齢は1990年代が有意に低かった (平均1.5年, p

治療を必要とした癌性胸膜炎または心嚢炎患者にAnthracyclines系抗癌剤を局所投与し, 投与後に採取した排液中の癌細胞に対し共焦点レーザー顕微鏡を用いて癌細胞内の薬剤分布パターンを観察した.局所療法により胸水, 心嚢液のコントロールが良好であった群は癌細胞内の薬剤分布パターンは核内に著明な取り込みを示し, 胞体内にもびまん性に分布していた (Diffuse pattern).一方, コントロールが不良であった群は胞体内では斑状の分布を認め, 核辺縁, 核内には不均一にわずかな薬剤分布を示すのみであった (Spot pattern).このように薬剤分布バターンと治療効果の間には関連が見られ, 細胞内分布の観察は癌性胸膜炎または心嚢炎患者における局所療法の効果推定の指標となる可能性が示唆された.また, 共焦点レーザー顕微鏡を用いた抗癌剤の細胞内分布の観察は容易であり, 臨床検体への応用も可能であった.

切除肺癌の核DNA量を測定し, また, ras癌遺伝子産物p21蛋白の発現を免疫組織化学的に調べ, それらの肺癌患者の予後における意義を検討した.DNA量を測定した84腫瘍のうち, 19例 (23%) がDNA diploid腫瘍であり, 65例 (77%) がaneuploid腫瘍であった.rasp21の染色性をみた91例のうち, 58例 (64%) が陽性 (weak+strong腫瘍) であった.DNAdiploid腫瘍患者の5年生存率は61%, aneuploid腫瘍患者は35%であり, aneuploid腫瘍患者の予後は有意に不良であった (p

原発性肺癌手術後1年以上自覚症状なく経過後, 腹部巨大腫瘤が回腸転移と判明した症例を経験した.症例は59歳男性.肺扁平上皮癌のため化学療法施行後, 右上葉切除術 (pT2N2M0) を受けた.手術17ヵ月後, 腹部腫瘤を主訴に当科を受診, 下腹部中央に手拳大で弾性硬の腫瘤を触知した.CT及びMRIで, 腫瘍は骨盤腔内右前方に位置し巨大な空洞を有し, 下端は膀胱壁に達していた.経皮的に腫瘍内空洞造影を施行したところ, 空洞は腸管と交通性を認めた.生検の結果は低分化型扁平上皮癌で, 肺癌の転移と判定した.左腋窩リンパ節転移もあり, 全身状態も不良なため保存的に治療したが, 再入院後約2ヵ月で死亡した.剖検で腫瘍は14×11×6cm大で回腸と腫瘍性に交通していた.原発性肺癌の小腸転移の報告は最近増加しているが, 原発巣切除後1年以上自覚症状なく経過し巨大腫瘤として発見され, 開腹手術を施行せずに転移と診断しえた症例はまれである.

健常者19例, 肺癌患者59例 (腺癌32例, 扁平上皮癌14例, 小細胞癌13例), 転移性肺腫瘍7例について, 血清ラミニンP1, 7Sコラーゲン濃度を測定した.小細胞癌患者のみで健常者より血清ラミニンP1, 7Sコラーゲン値ともに平均値が有意に増加し, 陽性率も高かった.腺癌, 扁平上皮癌患者では, 病期進行例で高値例を認めた.更に小細胞癌で治療によって測定値の変化を認め, 治療モニターとして有用となる可能性が考えられた.

切除された肺扁平上皮癌48例の核DNA量をフローサイトメトリーで測定し, 中心型と末梢型腫瘍に分けて検討した. 中心型腫瘍 (23例) のDNAaneuploidyの頻度は82.6%, DNAIndex (DI) は1.65±0.40 (±SD) であった. 一方, 末梢型腫瘍 (25例) ではそれぞれ40.0%, 1.29±0.37で末梢腫瘍の方がaneuploidyの頻度は少なく, DIは小さい値を示した (P

赤血球亜鉛量と血清亜鉛量を64例の肺癌患者で測定し, 以下の結果を得た. 1) 進行肺癌患者では健康成人に比し血清亜鉛量は低下し, 赤血球亜鉛量は増加した. 2) しかし, 炭酸脱水素酵素量に差はなかった. 3) 進行肺癌患者の赤血球をヘパリン加生食で洗浄すると, 赤血球亜鉛量の約1%の亜鉛の遊離を認めた. 4) 以上より, 進行肺癌患者では亜鉛の赤血球への集積が見られ, 担癌生体の亜鉛の動態に多大な影響を示すものと考えられた.

術で摘出した原発性肺癌25例の細胞核DNA量をflow cytometry (FCM) で測定し, 臨床病態との比較検討を行った. 17例68%の症例に異常DNA量 (以下DNA aneuploidy) を認めた. DNA aneuploidyの頻度は臨床病期の進行に伴い増加する傾向にあった. さらに, 腫瘍径の増大に伴いDNA量 (DNAindex) が増加した. また, 8症例につきcellcycleを測定したところ, DNAindexの増加に伴いS期の比率が増加した. FCMによる悪性腫瘍細胞の核DNA量の解析は, 腫瘍の悪性度の評価に有用であると考えられる.

肺腺癌70例について細胞型分類を考慮とした組織亜分類を行い, 各亜型と予後の関係について検討した. surface cell type (5年生存率100%) とgoblet cell type (100%) の予後は良好であったが, gland cell type (17.9%) はリンパ節転移し易く予後は不良であった. また, nonciliated cell type (24.9%) の多くの例は, 手術時には既に微小遠隔転移が存在していたと考えられた. 腺癌の組織亜分類は, 患者の予後と関係があると考えられる.

クロム粉塵の吸入, 喫煙の継続によって生じた気管支異型上皮細胞の可逆性について, 喀痰細胞診で追求した.非喫煙者ではクロム粉塵暴露中止後、約5年の経過の後, 中等度以上の異型細胞は喀痰中に検出されなくなった.禁煙者では喫煙中止後, 約3年の経過の後, 中等度以上の異型細胞は検出されなくなった.気管支異型上皮には可逆性があり, 比較的短期間で修復されることが示された.禁煙が肺癌発生減少の大きな要因となろう.

肺癌患者家族の血清中セレン, ビタミンE (αトコフェロール) およびビタミンA (レチノール) 値に家族性因子があるかどうか検討した. 肺癌患者家族115例の血清セレン値0.116±0.024μg/ml (±S.D.) は対照群 (2親等以内に癌疾患のなv健康人で, 年令, 性構成は家族群と一致) 0.122±0.014μg/ml より低い傾向を示し (P

肺小細胞癌の核DNA量を測定し, そのヒストグラムと, 化学療法に対する効果との関係を検討した.A型 (G0G1期に相当する細胞の多い型) を示した症例は化学療法に対する効果は不良で, B型 (S, G2M期に相当する細胞の多い型) を示した症例は化学療法に対する効果は良好であった.肺小細胞癌の核DNA量のヒストグラムの解析は化学療法剤の選択, 治療法の選択に有力な指標になると考えられた.