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石灰乳ならびに無水塩化アルミニウムを脱塩化水素剤として,液相において各種の塩素化エタンを脱塩化水素し,その生成物ならびに反応性を調べた。CH2Cl・CHCl2を石灰乳で脱塩化水素すると,CH2=CCl2になるが,無水塩化アルミニウムで行なうと,CHCl=CHClとなる。その他の塩素化エタンは脱塩化水素剤として,塩基または酸のいずれを用いても,その分解生成物は同じである。脱塩化水素反応における塩素化エタンの反応性は脱塩化水素剤として塩基を用いた場合には,水素のとれる側の水素が少ないほど,また,塩素のとれる側の塩素が多いほど,増大する。また,脱塩化水素剤として酸を用いた場合には,塩素のとれる側の塩素が多いほど, また, 水素のとれる側の水素が多いほど, 反応性が増大する。

酸化銅-酸化亜鉛触媒を用い,アンモニア:水素:シクロヘキサノール=4:1:1,シクロヘキサノールの仕込み速度0.3～1.0ml/ hr・触媒充てん層ml,温度180～270℃ の条件でシクロヘキサノールの気相アミノ化反応を行なった。主生成物のシクロへキシルアミンの他に,シクロヘキサノン,ジシクロヘキシルアミン,シクロヘキサノンシクロヘキシルイミド等が生成した。これらの副生成物は上記の反応条件では,すべてシクロヘキシルアミンに転化し得る物質であることを確かめた。この気相アミノ化反応は多種類の反応の組合せであるが,まずシクロヘキサノールがシクロヘキサノンに脱水素され,つぎにこのものの還元アミノ化によってシクロヘキシルアミンが生成するものと考えることができる。またシクロヘキサノンとシクロヘキシルアミンの脱水縮合によってシクロヘキサノンシクロヘキシルイミドが生成し,このものの水素添加によってジシクロヘキシルアミンが生成する。さらにジシクロヘキシルアミンとアンモニアとから,2分子のシクロヘキシルアミンの生成する反応もみられる。

シクロヘキサノンをアンモニア水もしくはアルコールのアンモニア溶液中で,ニッケル触媒を用い,温度60～160℃,水素による加圧5kg/cm2以上にて反応せしめると,シクロヘキシルアミンが95%以上の収率で得られた。温度,圧力,反応溶媒の種類と量などの条件の反応速度ならびに生成物の組成に及ぼす影響について詳細に検討した結果,反応速度は,反応液中のシクロヘキサノンの濃度にはほとんど影響されず,触媒濃度と水素分圧とに影響されることを知った。反応機構としては,アンモニアとシクロヘキサノンとが触媒に吸着され,つきに水素添加が進むという考え方が合理的であろう。水溶媒の代りにアルコール溶媒を用いて反応せしめると,反応途中の液にはシクロヘキサノンシクロヘキシルイミドが多量に存在していることを確認した。しかしこのものは,反応終了時にはすべてシクロヘキシルアミンに転化している。

塩化ベンジルを常圧,沸点において,酢酸溶媒中で酸化した場合,臭化コバルト触媒を使用すると,安息香酸を生じ,酢酸ベンジルはほとんど生成しない。一方,酢酸コバルド触媒を使用すると,安息香酸と酢酸ベンジルの混合物が得られる。反応系から酸素をしゃ断すると,塩化ベンジルはコバルトイオン存在のもとで酢酸と反応し,酢酸ベンジルのみを与える。この反応の速度は臭素イオンの存在で低下する。酢酸ベンジルの酸化は酢酸コバルト触媒のみでは進行しない。また,触媒成分として,塩化水素を添加した場合も反応は進行しない。触媒成分として,塩素,臭化水素あるいは,臭素のいずれかを添加すると,反応は進行する。臭化水素および臭素は塩素より触媒効果が強い。

フェニルシクロヘキサンを液相で,常圧あるいは加圧の下に酸素または空気で酸化し,フェニルシクロヘキサンヒドロペルオキシドを得る方法について研究した。フェニルシクロヘキサンは,クメンに比較して酸化を受け難く,またそのヒドロペルオキシドも不安定であるが,水酸化カルシウムあるいは炭酸水素ナトリウム等の弱アルカリ性物質の存在の下では,ヒドロペルオキシドが95%以上の収率でえられた。反応温度は120～100℃の範囲がよいが,反応系のヒドロペルオキシドの濃度の低いうちは,温度は幾分高い方がよい。反応開始剤として,ヒドロペルオキシド自身が役立つ。フェニルシクロヘキサン液相と酸素を含むガスとの接触面を大きくする必要があり,反応系のかきまぜは特に重要である。反応液中のヒドロペルオキシド濃度は10～20%にとめる。これ以上ヒドロペルオキシドの濃度を高くすると,その分解反応が激しくなり,高い収率を得ることが困難であった。

ニッケル触媒を用いるケトン類の還元アミノ化にさいし,シクロヘキサノンやアセトンの場合の反応速度は,ケトンの濃度にはほとんど影響を受けないことはすでに報告した。今回, メチルエチルケトン, メチルイソブチルケトンおよびジエチルケトンについて検討したところ, 反応速度はいずれの場合もケトンの濃度に比例することを知った。主生成物は第一アミンであるが, ジエチルケトンの場合にのみ第ニアミンが多かった。上記ケトンのそれぞれの還元アミノ化反応速度の比はつぎのようであった。シクロヘキサノン:アセトン:メチルエチルケトン:メチルイソブチルケトン:ジエチルケトン=10:10:5.4:5.0:3.8。またこれらのケトンの混合物を還元アミノ化した場合,どのケトンから先に反応するかについてしらべた。この反応性の順位は反応速度の順位とまったく同じで,その比は10:7.1:3.5:2.3:1.3であった。これらの結果から,ケトンの還元アミノ化反応の機構を推定した。

フェニルシクロヘキサンの合成を目的とし,塩化シクロヘキシルとベンゼンとのフリーデル・クラブツ縮合反応を,工業的見地から研究した。フェニルシクロヘキサンの収率に及ぼす反応の条件,たとえば反応系に加えられる塩化シクロヘキシル対ベンゼンのモル比,触媒の濃度,温度,時間などについて検討した。また,この反応の副生物であるジシクロヘキシルベンゼン, トリシクロヘキシルベンゼンなどを, ジスプロポーショネーション反応によって, フェニルシクロヘキサンに変換することができるので,その反応条件を検討した。

アセトンを,水あるいはアルコールを溶媒として,これにアンモニアとニッケル触媒を加え,温度100～180℃,水素による加圧20kg/cm2以上にて反応せしめると,イソプロピルアミンが,90%以上の収率で得られた。温度,触媒量,水素分圧,アンモニア量等の反応条件が,反応速度ならびに反応生成物の組成に及ぼす影響について検討した結果,反応速度は反応液中のアセトンの濃度にはほとんど関係なく,触媒濃度と水素分圧とにほぼ比例することを知った。このことからこの還元アミノ化反応の機構は,すでに報告したシクロヘキサノンの還元アミノ化の場合と同じく,触媒にアンモニアとケトンとが吸着され,それに水素が接触してアミンになるものと考えることができる。また溶媒の種類によって,ニッケル触媒の寿命に差がでてくる。反応液へ触媒のニッケル分が溶出する現象が観察されたが,ニッケル溶出量の多い水溶媒において,触媒の寿命が短かかった。

塩化シクロヘキシルの合成を目的とし,シクロヘキサンの光化学的塩素化反応を研究した。シクロヘキサンおよびその塩素誘導体,(塩化シクロヘキシル,ジクロルシクロヘキサン,トリクロルシクロヘキサン等)は,いずれも反応系において光化学的に塩素化されるが,シクロヘキサン核に塩素原子が1個導入されるごとに,塩素化反応の速度は1/1.7に下がる。塩化シクロヘキシルの収率を高くするためには,反応系において塩素と塩素化誘導体とが衝突する機会を少なくする必要があり,それ以外の反応条件は効果がないことを知った。塩素-シクロヘキサン溶液を暗所で調製し,これを光の照射されている傾斜面に流下させる方法,あるいは,反応生成液中に急速に流入する方法,あるいは,塩酸中に2相に分かれるままに供給する方法が,いずれもよい成績を示した。15%の塩素を含むシクロへキサン溶液をこれらの方法によって処理し,シクロヘキサン基準で,塩化シクロヘキシル収率95%をえることができる。