卵巣癌89例, 婦人科良性疾患157例及び正常者126例について血清 sialyl Tn (STN)値を測定し, 腫瘍マーカーとしての有用性を検討するとともに, 卵巣癌患者の予後と術前STN値との関係を検討した 1. 血清STN値は偽陽性率が正常者で4.0%, 良性疾患で9.6%と非常に低く, 卵巣癌で48.3%の陽性率を示した. 臨床進行期との関係では, I期26.1%, II期33.3%, In期63.2%, IV期70.0%を示し, また, 腫瘍最大径とよく相関した. 2. 組織型では漿液性嚢胞腺癌47.4%, 粘液性嚢胞腺癌59.3%, 類内膜癌42.9%, 類中腎癌30.0%の陽性率を示し, 陽性率及びその値とも粘液性嚢胞腺癌において高値を示したが, 他組織型の癌との間に有意差は認めなかった. Gradeとの相関は認められなかった. 3. 術前血清STN値と卵巣癌患者の予後との関連を検討した. 術前血清STN値が50.0U/ml(mean+3SD)以上をSTN陽性例とすると, STN陽性例の1, 2, 3, 4及び5年生存率は 59.5, 29.7, 18.9, 10.8及び10.8%に対して, STN陰性例ではそれぞれ, 96.2, 92.3, 86.5, 82.7及び76.9%と有意に延長し (p