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症例は28歳，男性．2010年5月腹痛を主訴に，救急外来を受診．上腹部は硬く，腹膜刺激症状および貧血を認めた．CTにて胃癌および転移リンパ節の破裂が疑われ入院．内視鏡検査で胃角部から胃前庭部後壁に2型胃癌を認め，生検にて低分化腺癌，免疫染色α-fetoprotein（AFP）陽性．血清AFPは133.7ng/ml．術前のCT再検にて，上腸間膜静脈に腫瘍栓を疑う欠損像を認めた．胃全摘術，D2郭清，門脈腫瘍栓摘出術施行．病理組織検査では原病巣は低分化腺癌に一部hepatoid patternを含みAFP陽性，腫瘍栓でも同様の所見を認めた．T2(MP)N3aM1(OTH)H0 P0，stageIVの診断．術後1カ月よりS-1にて補助化学療法を開始．現在術後1年経過するが再発徴候はない．転移リンパ節破裂を契機に診断された門脈腫瘍栓を伴うAFP産生胃癌に対し，根治的手術を行ったまれな症例を報告する．

症例は88歳，女性．嚥下困難を主訴に来院した．上部消化管内視鏡では，胃上部の圧排像と幽門前庭部小彎に早期胃癌を認めた．上部消化管造影では，食道裂孔ヘルニアにより胃が縦隔内に挙上されており，縦隔内に腫瘤影が見られた．CTにて，縦隔内の胃壁から突出する14×10cm大の腫瘤を認め，食道裂孔ヘルニアにより縦隔内に挙上した胃壁から発生した粘膜下腫瘍と診断した．開腹して食道裂孔を開き，腫瘍と胃を腹腔内に引き戻し，胃全摘術を施行した．病理所見により幽門前庭部に早期胃癌を合併した胃原発GIST（gastrointestinal stromal tumor）と診断した．術後経過は良好であったが，術後11カ月で肝・縦隔・左胸腔内にGISTの再発を見たため，imatinibによる治療を開始した．食道裂孔ヘルニアを伴う縦隔腫瘍の診断においては，縦隔に移動した胃壁から発生したGISTの可能性も考慮すべきと考えられた．

症例は51歳女性. 2001年7月,喀血を主訴に当院呼吸器科受診,胸部レントゲン所見上,右下肺野に浸潤影を認めた.気管支鏡検査を施行したが,出血源の同定は不可能であった. 2002年2月,再び喀血したため,気管支鏡検査を再施行したが,出血に関して有意な所見はなかった. 2002年4月, 3度目の喀血があり,精査加療目的に当院呼吸器科入院となった.気管支動脈造影および肺動脈造影にて気管支動脈-肺動脈シャントが描出されたので,気管支動脈-肺動脈シャントに起因する喀血と診断,喀血のコントロールを目的に2002年6月3日,右肺底区域切除を施行した.術後病理診断は肺アスペルギルス症であった.術後経過は良好であり以降喀血はない.術前に肺アスペルギルス症とは診断しえなかったが,喀血に対して外科治療は有効であった.気管支動脈-肺動脈シャントと肺アスペルギルス症に関して若干の文献的考察を加えて報告する.