1. 典型的な日本人学生ベトナム語の文法的な間違い「đó」と「của」
- Author
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Nguyen, Thi Ngoc Tho
- Subjects
ベトナム語 ,文法 ,間違い - Abstract
研究ノート, 本稿は日本人学生の、ベトナム語を学習する上で見られるいくつかの典型的な「文法的な間違い」を追究することを目的とする。「文法的な間違い」には敗の移転による誤用(interlingual error)と学習言語において何らかの原因による誤用(intralingual error)があり、ここで扱う間違いは前者―ベトナム語を使用する際、母国語である日本語から影響を受けた結果、文法的に間違えてしまった場合―をいう。学生の卒業論文原稿等で収集した様々な文法的誤用のデーターから「đó」と「của」 の誤用例を研究対象として選出し、それらを分析、原因を追究し、今後ベトナム語教育を施していく上で活用することを目指す。一つは指示詞の「đó」である。ベトナム語の指示詞と日本語の指示詞体系は類似点が多く、日本人学習者にとっては習得しやすいと思われる。しかしその類似性が災いし、初心者ばかりか3,4 回生の間でも「đó」の誤りは多く見られる。彼らの誤りを分析した結果、「đó」を日本語の指示詞「それ」と同じ感覚で使う傾向があるということが分かった。日本語の「それ」は主語としても目的語としても使うことができるが、ベトナム語では「đó」は「Đó là … .」の構文に限り主語として使う。また、目的語として使う場合には名詞の後に置かなければならない。二つは所有格の「của」である。ベトナム語の「của」と日本語の格助詞「の」の意味と用法を比較した結果、日本語の「の」のほうが多用途であることが分かった。両者の類似点は所有関係(所有主、行動・物事の主体、所属)を示すということだと思われる。修飾される名詞の他の属性(時間、空間、材料、内容説明等)を示すにはベトナム語では「của」 は使えない。しかし、学生の誤用例を見ると、修飾される名詞の内容説明(対象)のために「của」が使われる傾向にある。以上より、ベトナム語指示詞「đó」と所有関係を示す「của」について、学生に指導する際には本稿の事柄を踏まえる。
- Published
- 2019